鈴音~生け贄の巫女~

02





雨の中。

自分の名前を呼びながら、ずぶ濡れになっても尚探し回っている両親の姿を見た。


(私、ここにいるよ)


そう言おうとしても、声は出てくれない。


(お父さん、お母さん!)


唇だけが開閉し、されど喉が震える事はなかった。

母は泣いているのだろうか。

頬に伝っている雫は雨なのか涙なのか、最早わかりはしない。


(ここだよ!ここだよ、お母さん……!そっちに行きたいよ、帰りたい……!)


必死に、母のいる方へ手を伸ばす。


(お父さん、私、ねぇっ、やだよ……!)


けれども、気付かぬ両親は自分をすり抜けて何処かに行ってしまう――………
辺りが、真っ暗になった気がした。



(助け、て………)



届かぬ声は少女の胸の中だけに木霊する。



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