炭酸アンチヒーロー番外編

君の声、君の名前

生まれて初めての両想いは、毎日、ドキドキの連続。



「まお」



耳に届いたその声に、ドキンと心臓がはねる。

私は平常心を装って、背中を預けていた壁から身体をおこした。



「辻くん、」

「わり、待たせた」

「ううん、そんなことないよ」



首を横に振って彼の言葉を否定しながら、ちょっとだけ笑ってみせる。

行こう、と目で促されて、廊下を歩き出した辻くんの斜め後ろに続いた。



「どうだった? 学校祭の実行委員の様子は」

「……マジすごい力の入れよう。やっぱ俺向かねぇよああいうの」



私の問いかけに、そう言って大きなため息をこぼす辻くん。

本当にうんざりしていると感じられるそんな彼の様子に、思わずくすくすと笑ってしまう。



「ふふ。だって辻くん、係決めのホームルームで寝てたから」

「だからって、何も実行委員にすること……ほんとアイツら恨むぞ」



苦々しげに彼が言う『アイツら』とは、彼と仲のいいクラスの男子たちのことで。

ホームルーム終盤までなかなか決まらなかった学校祭実行委員に、そのとき机に伏せて爆睡中だった辻くんを推薦したのだ。
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