さよならの魔法
『変化』
side・ユウキ







たった1日で、何かが変わる訳がない。


春休み中だった、昨日までの俺。

始業式を迎えた、今日の俺。



背が伸びた?


いいや、全く伸びてなんかいない。

相変わらず、身長順では男子の真ん中くらいだ。


もっと伸びればいいのにな、とは思う。

牛乳を飲むくらいで背が伸びるなら、ほんとに毎朝飲んでやるけど。



声変わりした?


それも、答えはNOだ。

少し高めの声は、未だにそのまま。



ただ1つ、変わったこと。

それは、2年に進級したという事実。


昨日までの自分と何も変わらないはずなのに、進級したというだけで何だか少し大人になれた気がするんだ。



錯覚だろうか。

でも、そうやって、人は少しずつ大人になっていくのかもしれない。


毎日毎日、少しずつ。



学校が変わる訳でもない。

クラス替えがあるから、クラスメイトが少し変わるだけ。


それだけのことだと、この時はまだ思っていた。



何も変わらないはずの日常が、変わるなんて。

今も俺を悔やませる出来事が、この年に起きるなんて。


この時の俺は、考えもしなかった。









いつからだろう。


異変に気が付いたのは。

何かが1年の時と違うと、そう感じ始めたのは。



2年1組。

ここが新しく分けられた、俺のクラス。


3年に進級する時にはクラス替えがないから、来年もこのクラスで同じ顔を見て過ごすことになる。



同じクラスのメンバーの中には、見覚えがある人間が何人もいた。

そのうちの1人が、あの子だ。


天宮 春奈。

窓際でいつも本を読んでいた、大人しい女の子。



1年の時も、大人しい天宮と同じクラスだった。

話したことはなかったけれど、彼女に嫌悪感を抱いたことは1度もない。


偶然にも、再び俺は彼女と同じクラスに分けられることとなったのだ。



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