「……すー……すー……」


「…………」



隣で眠っている彼女の頭をそっと撫でる。
千夏はとてもやさしく、穏やかな顔をしていた。



……抱きしめると背中に手を廻して甘えてくる所も、からかうと顔を赤くして反応して来る所も……可愛くなって、つい苛めたくなってしまう。


ドジな一面もあり、時々意地っ張りにもなる。
復讐の為だけに彼女に近づいたはずなのに……、いつの間にか、俺の心の中は……千夏で一杯になっていた。



最初の頃は復讐を果す為に彼女の心を開こうと躍起になっていたが……。
何度か会ううちに千夏を利用する事に、だんだんと迷いが出て来ていた。



それでも、俺のせいで両親が大切に守って来たモノを手放してしまった事への償いでもある復讐を、俺は今さらやめるわけにはいかなかった。


そして……あの日、マンションに千夏を呼び出した。
千夏に、彼女の姉の事を聞き始めると、何かを感じたのか千夏の表情はだんだんと強張っていった。




「……そのお姉さんは結婚はしていたんだっけ?確か相手は有名な会社の―――――――――――――――」



「……お姉ちゃん達と、東條さんの復讐は関係あるんですか?」



これだけ聞けば、復讐に関係があると分かるのは当然の事。
肝心な事を彼女に訊くことを、つい俺は躊躇ってしまった。
……ダメだ……。復讐に千夏を利用する事は出来ない。


俺は……復讐をやめる決意をした。
両親には、本当に申し訳ない思いで一杯だったが、これ以上千夏を利用して続ける事は、俺には出来なかった。










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