「片月?」

「そばに来て」


瞳だけでは無かった。

珪介の背後でちらちらと揺れる細かな赤い光にも、紗矢の心は魅了されていく。

細かな光が形作っていたのは、大きな翼だった。

うっとりするほど綺麗な翼に向かって、紗矢は手を伸ばした。


「赤い翼に触れたいの」

「赤い、翼?」

「うん。すごく綺麗……ねぇ、来て。お願い」


珪介は懇願する声音にくすぐられたように、そっと目を細めた。


「……紗矢」


自分に向かって伸ばされている紗矢の手を掴もうとし、珪介はハッと我に還った。


「やばい、忘れてた」


少しだけ顔色を変え、彼は扉へ引き返していく。

遠ざかっていく赤い光の集合体を、紗矢はじっと見つめた。

彼の色が段々と薄くなり、そして翼が姿を消した瞬間、紗矢は大きく目を見開いた。

我に還るように、霞がかった意識が明瞭になっていく。

床の冷たさが紗矢の余計な体温を奪い取れば、忘れていた痛みが足首を刺激し始めた。






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