「大丈夫か?」


戸を引きながら、珪介が固い声を発した。

ランスがとてとてと不規則なリズムを刻みながら、中に入ってきた。

おぼつかない足取りで、けれど自分に向かってまっすぐ歩み寄ってくるランスを、紗矢は笑顔で迎える。


「ランス!」

「片月、床じゃなくてソファーに座れ……座ってくれるかな?」

「……え?……あ、はい。分かりました」


自分の傍に到着したランスの体を撫でながら、紗矢は珪介を見た。

戸を閉めドアノブに手を掛けた格好のまま、珪介は固まっている。


(変なの。思わず敬語になっちゃったじゃない)


彼らしくない言葉の響きに違和感を覚えた。

微動だにしない背中を凝視していると、紗矢の顔の横でランスが可愛らしく鳴いた。

ランスに気持ちを削がれ、紗矢は館内に目を向ける。

五之木学園の図書室は、校舎内ではなく校舎の東側に別棟として建てられている。

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