タオルを絞り終えてから、珪介はソファーの置かれた場所へと目を向ける。

身を丸め横たわっている紗矢へと、手を伸ばすように小窓から陽光が降り注いでいる。

さっきまでの喧騒など嘘のように、静穏な空間がそこにあった。


「ランス!」


包帯を巻かれた羽を広げながらランスが紗矢に近付いていくのを見て、珪介はつい声を張り上げた。

しまったとすぐに紗矢を確認するが、目を覚ました様子はなかった。


「……分かってるだろうな。美味そうに見えても、病人は喰うなよ」


低く声を発しながら、珪介は足早に一人と一匹の元へ戻っていく。

ランスは主人を一瞥するも、その細い足は停止させなかった。

紗矢の前で羽を閉じると、懸命に首を伸ばし、まぶたを閉じている紗矢の顔を覗き込む。

そして甘えるような鳴き声を発した。

珪介は思わず苦笑する。


「悪い。言われなくても、お前は分かってるし……どっちにしろ喰わないか」


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