『帰るよ』


そう言われたような気がして鳥に続こうとした瞬間、また大人の声が聞こえてきた。

響き渡ったのは、怒鳴り声に似た音だった。


「珪介君」


彼が怒られている。そう直感し、紗矢の心で心配と不安が膨らんでいく。

しかし、そんな気持ちをお構いなしに、鳥は紗矢の頭をくちばしで突っついた。


「やっ、やめてっ!……分かった、帰るよ」


苦々しく言えば、ランスが翼をはためかせ一気に上昇する。

空を駆け上がっていく躰から、ひらりと赤い欠片が落ちてきた。

柔らかで綺麗な、赤い羽だった。

それを両手で受け止め、もう一度紗矢は珪介の消えた方に目を向ける。

一つ、彼は間違っていた。


「さよならじゃない。またね、だよ!」


膨れっ面で、そう呟いた。


(また会うんだもん)


近い未来の再会を強く願いながら、回れ右をする。

そして、ここに来たときと同じように、紗矢は走り出したのだった。





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