静かな部屋の中で、カーテンのはためく音が響き渡っている。

布が風に舞い上げられるたびに、熱を持った日差しが部屋の中に鋭く差し込み、ベッドの下に並べられたクマのぬいぐるみの小さな黒い瞳を、きらりと輝かせた。


「もう、紗矢! 早くしなさい! 遅刻するわよ!」

「はーーい」


階下からの母の叫び声に静寂を破られ、紗矢は髪を結い上げていた手を止めると、とりあえずの返事をした。


「言われなくても、分かってるってば」


文句がちな声音を小さく付け加えれば、指先から離れたゴムがぱちりと音を立てた。

紗矢は慎重な面持ちのまま、姿見の前でひらりと一回転する。

後頭部の高い位置できっちり結いあげた髪はほつれもなく、紺地に白の細の線が入った胸元のリボンは六回も縛り直したかいあって、ふんわりと形をなしている。

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