滑り落ちそうになりながら階段をかけおりリビングに飛び込めば、受話器を握りしめて窓の外を見つめる母の姿があった。

誰かと通話中だったらしく、受話器から呼びかける声が小さく響いている。


「どうしたの?」

「あ、あ、あれ」

「何?」


母が指さす窓へと体を向ければ、すかさず「近寄っちゃ駄目よ!」という声が飛んできた。

窓の向こう側には、室内からの明かりに照らされている父の愛車がある。

しばらく目を凝らして、外の様子を注意深く伺ってみたが、見える景色は一向に変わらなかった。

紗矢は窓へ歩み寄る。


「カーテン、閉めようか」


再び背後で制止を促す声が発せられたが、紗矢はそれを無視した。

特に変わったことがない以上、さっさとカーテンを閉めてしまった方が、母のためにも良いと思ったのだ。

カーテンを閉める前にもう一度だけ、庭の様子を流し見た。


この作品のキーワード
ファンタジー  甘い  切ない    一途  微和風  恋愛 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。