やっとの思いで長い坂道を登り切ると、気持ちの良い風が吹き抜けていった。

紗矢はそっと瞳を細めた。

目の前には古びた二本の茶色い門柱。

けれど「五之木学園高等部」と刻み込まれた銘板は、しっかりとした光沢を放っていた。

柱と柱の間を通り抜ければ、クリーム色の敷石がまっすぐに伸び、左側には大きな校庭、右側にはテニスコートや体育館がある。

そして何よりも目を引くのは、校舎近くにある大きなシイの木である。

一年間毎日のように目にしてきた老木だが、目にする度、圧倒され足を止めてしまう。

木の持つ歴史が迫ってくるような気がするのだ。

そして太い幹の向こうに、五之木学園の豪奢な校舎がある。

所々、教室の窓が開かれていて、明るいざわめき声が風に乗って聞こえてきた。

やっと日常を感じ取る事ができ微笑んだ紗矢の横を、三人の女子生徒がパタパタと通り過ぎていった。


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