彼女たちは「やばい、HR始まる」と悲痛めいた焦り声を残していく。

校舎の外壁に備え付けられている時計を確認し見えた時刻に、紗矢は小さな悲鳴を上げ足早に歩きだした。


「おいっ。片月紗矢」


しかし門を通り抜けた瞬間名を呼ばれ、停止することを余儀なくされる。

肩越しに後ろを振り返り見れば、腕組みをした男子生徒が一人、柱にもたれ立っていた。

紗矢は思わず「うっ」っと苦々しい声を発した。


「相埜君、おはよう……何か用?」 


彼の名は、相埜伊月(そうのいつき)。

卓人よりも頭一つ分くらい背が高く、黒髪短髪で肌は浅黒く、活発な印象を与える。

一年の時は違うクラスだったため、言葉を交わしたことはないが、よく卓人とつるんでいるのを見かけていたので、顔と名前は把握している。


「卓人さんと一緒じゃねぇのかよ」


そして彼はいつも卓人のことを「卓人さん」と呼ぶ。

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