学校を出て坂を降り、赤い橋を渡り、紗矢は越河家に向かって懸命に駆け抜けていく。

学校と越河家のほぼ中間地点にある林に差し掛かったところで息苦しさに耐えられなくなり、両ひざに手を突き、身を屈めた。

荒々しい呼吸を繰り返し息を整えながらも、目は木々の隙間へと向いてしまう。


(ここで立ち止まってたら、危険かもしれない)


隙を見逃すまいとこちらを伺う禍々しい気配がそこにあった。

視線を移動させれば、それらが林の至る所で潜んでいることも分かってくる。

バサリバサリと羽音を響かせ、ランスが紗矢の隣に舞い降りてきた。

すると異形の気配が怯えるように距離を置く。

紗矢はランスの躰を撫でながら、少しだけ力を抜き、道の先を見据えた。


「早く行かなくちゃ」


思い切り息を吸い込んで、再び走りだそうとすると、後ろから制服を引っ張られた。

驚き後ろを見れば、紗矢を引き留めるようにランスが嘴でブレザーを挟んでいた。


「ランス?」


ランスはブレザーから顔を離し、視線を上空へと向けると、グルルと喉を鳴らした。


「どうしたの?」


じっと一方向を見つめているランスと同じように、紗矢も空を見上げた。

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