(珪介君だ)


その存在を噛みしめるように、紗矢は珪介の背へと回した手に力を込めた。


「……会いたかったよ」


思いが溢れ出していく。自然と言葉が零れ落ちていた。


「俺も、会いたかった」


珪介の声音も、息遣いも、逞しい両腕から伝わる力強さも、全てが紗矢の中で幸福へと変わっていく。


(私、やっと珪介君の所に帰って来られたんだ)


実感すれば、力が抜けていった。

ほっと息を吐き出したのち、気づいた光景に、紗矢は瞬きを繰り返す。

いそいそと、珪介から身を離した。

いつの間にか、珪介の後ろに人が集まっていた。

彼の父の和哉や、蒼一、修治に裕治といった気安い顔ぶれだけではない。

見知らぬ男性たちがたくさんいた。

年齢層も高く、みな一様に、気難しそうな顔をしている。

そんな人々から注がれる視線にうろたえていたが、修治の後ろから顔を出した人物に気付き、紗矢は笑顔になる。


「紗矢ちゃん、お帰り!」


明るくそう言って、舞は破顔した。


「ただいま!」


紗矢も負けずに声を上げると、それを聞いていた和哉が歩み寄ってきた。


「紗矢さん、よく力を取り戻してくれた……おかげで無事に顔見せを執り行えそうだ……しかし」


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