月日は流れ、十月下旬。

曇り空の下、紗矢は越河家の庭をうろうろしていた。

林の方をチラリと見ては踵を返し、シフォン生地の裾をふわりと翻す。

今、紗矢は、真っ白なワンピースに身を包んでいた。

髪型もゆるく巻いた髪をサイドでアップさせ、白い花の髪飾りが添えてある。

今朝がた唯が顔を輝かせながら手腕を振ったのだ。

今日は越河家当主と求慈の姫をお披露目する日である。

紗矢たちが住まう越河家の一階の応接間や食堂には、ぽつぽつと五家の関係者が集まり始めている。

もうすぐ開始予定時刻になるのだが、紗矢にはどうしても必要なものがあった。


「……あっ!」


林の向こうから屋敷に向かって近づいてくる気配を察知し、紗矢は結界を飛び越え林の中の小道を走りだした。

とてとてと歩いてきていた修治が顔を上げ、走ってくる紗矢に気付くと、驚きで口を開ける。


「あ? おっ、おい!」


紗矢の後ろに誰もいないことに、修治は口元をひきつらせた。


「お前、一人か!? 一人で結界超えんなっつーの!」

「……ごめん……でも、待ちきれなくて」


修治の元にたどり着き、息を整えてから、紗矢は笑みを浮かべ手を差し出した。

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