(私、頼りにしすぎてるよね)


亡くなって一年も経つというのに、いまだに不安になったときや困ったときは、祖母にすがりつきたくなる。

彼女の的確な言葉が欲しくなるのだ。


『紗矢』


風が葉を揺らす音。車の行き交う音。校舎から微かに聞こえる先生の声音。

それらがすっと遠のき、細かな振動と共に祖母の声が聞こえてきた。

慌てて周囲を見回し、紗矢は息をのんだ。

テニスコートと体育館の間に祖母の姿があったのだ。

嬉しそうに微笑んだ祖母へ向かって、紗矢は歩き出した。


『紗矢』

「お祖母ちゃん」


近寄れば、彼女は踵を返し、水に押し流されるように前進する。


「待って!」


物音の聞こえない体育館裏を通り、小さな観測池の脇を抜け、祖母は裏門から学園の外へと出て行った。

紗矢は門の所で立ち止まり、長い階段を滑り降りていく祖母に対し、苦い顔をした。


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