祖母のようなモノがぼろぼろと崩れ落ち、その全てが真っ黒な塊へと変化していく。

更に毛を逆立て、目を光らせるランスの様子にただただ困惑すれば、遠くからキイッと戸が開くような音が聞こえた。

視線を彷徨わせ、紗矢はハッとする。

祠の扉がひとりでに開いていたからだ。

観音開きになっているその奥で波立つように影が蠢き、一人の少年が姿を現した。


「珪介、君」


その姿は今現在の彼ではない。

初めて会ったときの彼の姿である。

そしてちょうど、今まさに自分が強く思い浮かべた姿だった。

小さな珪介は見下すような瞳で、紗矢とランスを交互に見やった。

ランスが怯えたように身を震わせれば、彼は口の端を微かに上げ、短剣を持ち直す。

幼き双眸が好戦的な光を放ち、標的を定めたかの如くランスで視線を止めた。

紗矢は短く息を吸い込んだ。


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