「しかも、どうして俺? 普通に考えれば峰岸の姿で出てくるだろ……もしかして、お前俺に惹かれてたりするの?」


淡々とした声音で聞こえてきた台詞に、一際強く、鼓動が鳴り響いた。

慌てて胸元を手で抑えれば、珪介がちらりと振り返る。

視線が絡み合い、胸ポケットの辺りがほんのりと熱を帯びた。

そして余韻を残しながら、熱は体の端へ広がっていく。


「なっ、何を、言ってるのよ。私は越河君みたいな性格悪い人なんて、嫌い、です」


しかめっ面をしたまま、珪介が顔を前に戻せば、ランスが彼の脇につき、「クワッ」と一鳴きした。


「あっちは名前で、なんで本物の俺が名字呼びなんだよ」


言葉は、最後まで聞き取れなかった。

珪介の靴底が、勢いよく土を跳ね上げる。

弾丸のように素早く直進し、刀を振るう。

鋭い閃光が、小さな手から短剣を弾き上げた。


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