「今度、ちゃんと挨拶に行かないとな」

「挨拶、ですか?」

「そう」

 新堂先生は口元に笑みを湛えながら、私の頬を優しく撫でた。

「理紗の親御さんに『娘さんとお付き合いさせて頂いています』って。あ、誤解しないでくれよ? 今すぐ結婚したいって言ってるわけじゃないから。でも、理紗とこうなった以上、ズラッとするわけにはいかないからね。もちろん、ちゃんとゴムは着けたから避妊出来たはずだけど」

 必死で言い訳する新堂先生が可愛くておかしい。
 でも、こんな真面目さこそ、新堂先生らしいといえば新堂先生らしい。

 そして、新堂先生から出てきた〈結婚〉の二文字。
 私はともかく、新堂先生は三十半ばなのだから、結婚を意識してもおかしくないのかもしれない。

 不意に、新堂先生との結婚生活を想い描く。

 私は仕事を辞めて、専業主婦にでもなるのだろうか。
 毎日、学校に出勤する新堂先生を見送って。

 ただ、私はまだまだ家事を完璧にこなせない。
 やっぱり、結婚するとなったら、新堂先生の負担にならないように何でもひとりで出来るようにならないとダメかもしれない。

「花嫁修業しておきます」

 私の言葉に、新堂先生は驚いたように目を見開く。
 でも、すぐに優しく微笑んだ。

「ゆっくりでいいから」

 新堂先生は耳元で囁くと、額に、頬に、唇にキスを落とす。

 外から聴こえる雨音は、いつまでもやむことがなかった。

[雨恋焦がれ-End]

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