二度目の片思い
──そして、今。

藤咲は、昨夜のことを覚えていないという。

……いやいや、それはダメでしょう。だって俺、結構恥ずかしいこといっぱい言ったのに。

ずっとすきだったとか、忘れられなかったとか、愛してるとか。

それをまた、言わなきゃならないの?



「……どう? 思い出した?」

「ふ、ぇ、あっ、わかんな……っ」

「………」



訊ねると、俺の手に感じて震える彼女は、小刻みに首を横に振った。

それを見下ろしながら、俺はますます弱ってしまう。



『あっ、あん、越田くん……っ、すき、だいすきぃ……っ』

『ッは、……俺も、すきだよ』



つい数時間前、あんなに激しい応酬をしたというのに……こんなに綺麗サッパリ、人間の記憶って忘れられるものなのだろうか。

……アルコールって恐ろしい。



「……ふ、ぅ……っ」

「──!」



と、そこで俺はようやく、自分の眼下にいる彼女が快楽のせいだけじゃない涙を流していることに気付く。

俺はあわてて、手を止めた。
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