二度目の片思い
「……あのさ、念のため、弁解しておくと……昨日の時点では、一応お互い同意の上だったから。その点は、信じて」

「……う、ん」



頷いた彼女を見て、ようやく和晴はホッとしたような表情を浮かべた。

……そう、その点──彼が無理やり、自分にそういう行為を迫ったか──は、特に心配してはいなかった。……どんな流れだったにせよ、高校時代、ずっと和晴のことを想っていた自分が、彼を拒否するはずがないのだ。


昨日だって──と、彩音は覚えている記憶の部分を振り返る。

久しぶりに和晴の姿を見たとたん、数年間も心の奥に封じ込めていた恋心が、溢れ出てきてしまった。

勇気がなくて、自分から話し掛けるようなことはできなかったけれど……高校時代のあの頃のようにまたふたりで笑いあいたいと、そう願いながら彼のことを見つめていたのだ。

高校を卒業してから、数人の男性と付き合った。それでもどうしても、彼のことが忘れられなかったから。


今しがた、つい泣いてしまったのは、自分のからだに触れる彼が、なんだか知らない人に思えて……少しだけ、怖くなってしまったから。

それに……昨夜の記憶を飛ばしてしまった自分に、彼が怒っているのだと、そう思ったのだ。

……この彼の様子では、どうやらそれは、杞憂だったようだけど。



「それともう一個……質問っていうか、確認」



彼のその言葉に、彩音は不思議そうな顔で和晴を見上げた。

視線の先では、まっすぐに、彼が自分を見つめていて。
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