あなたと私のカネアイ

愛を信じる男

 木曜日はすぐにやってきた。
 荷物は少しずつまとめていたけど、朝からそれを運び出したり、婚姻届を出しに行ったり、バタバタしているうちにあっという間にお昼が過ぎてしまった。
 壁に掛けた時計の針がすでに二時を指しているのを見て、そういえばお腹が空いたな、なんて考える。
 すぐに使わない衣類や小物はまた後で時間があるときや使った後に片付ければいい。
 そう思い、腹ごしらえをしにキッチンへ向かおうとしたところ、部屋のドアがノックされた。

「はい?」
「結愛、お昼ご飯食べるよね?」

 返事をすれば、ドア越しに円さんの声が聞こえてきた。
 部屋に入らないっていう条件も律儀に守ってくれているらしい。

「あ、はい。もしかして、作ってくれたんですか?」

 そういえば、家事もできるって自分で言ってたな。

「うん。チキンときのこのクリームパスタ。どうかな?」
「おいしそうですね。片付けも落ち着いたところなので、今行きます」

 買い物はしてこなかったのに、材料がちゃんとあるってことは普段から料理をしてるんだろう。
 マンションに来たときにすべての部屋を案内されたけど、どこもとても綺麗にしてあったし、きちんとしている人なんだと思った。
 荷物も率先して運んでくれたし、それでいて、私のプライベートな空間には踏み込まない気遣いも見せる。そういうところは好ましいと思う。
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