そして 君は 恋に落ちた。





一難去ってまた一難。






「小林君!急いでってば」

「お前女じゃねーな。
 起きて10分で用意終わるって有り得ねーぞ」



黒の革ベルトの腕時計を何度も見ながら玄関先で慌てる。が、当の彼は大して急ぐこともなく普通にジャケットに腕を通していた。



「マイペース過ぎだよ!」

「お前に言われたかねーぞ。なんだその格好」


「地味子も大概にしろよ」とブツブツ言う彼に、イラッとする。



「メイク位しろよ
 んな不細工と並んで出勤とか有り得ないんだけど」


革靴を履きながら私への暴言を遠慮なく続ける彼に、「なら泊まらなきゃいいでしょー!」と叫びたくなるのをグッと抑え玄関を開けた。

――が、腕を引かれ開いた扉がまた閉まる。



「何すんの」

という言葉を彼が遮った。



「悪かったな」


そう言って、ぽかんとする私の代わりに扉を開けた。

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