オジサンが欲しい
高校を卒業するまでは、順調な人生を歩んでいた。
生まれつき、そこそこの容姿にも恵まれ、高校生の秋には早くも就職が決まった。
勤めた会社が潰れるなど、夢にも思わなかった当時は、安寧な人生設計を組み立てていた。
転落人生とはまさにこのことで、寺尾は会社が倒産した立て続けに、母を亡くした。
幼い頃に父が病死してから、女手一つで息子を育ててきた丈夫な母が、なんの前触れもなくぽっくりと死んだのだ。
これでとうとう、母をずっと支えて行くという、寺尾のささやかな願いも消え去った。
なぜこんなことになったのか?
あまりに酷いことが連続して、寺尾は一時期そんなことを考え続けていた。
しかし、時間が経つに連れて考えることを放棄し、すでに人生を諦めていた。