私は彼に愛されているらしい2
胸の内に留めるつもりが機嫌が悪いと声になってしまい、相手を不愉快にさせたこともある。

しかしどれも共通することがあった、それが喜ばないということだ。

結婚を軽くでも意識すればこの人との未来を描いて嬉しくなるはず、それなのに有紗は嫌悪感を抱いた。

面倒とさえ思ったときもある。

今の自分が好きなのだ、持田有紗という名前も好きなのだ。

出来ることなら変えたくない。

銀行だって運転免許だって変えにいかなくちゃいけない、社員証もそうだ。

結婚すれば負担が来るのは男だなんて誰が言った、女の方は今までの自分を書き換えに走らなければいけないのに。

語呂だって悪くなる、少しも憧れなんか持てなかった。

それはみちるも同じ思いだと知ったときは嬉しかったが、彼女はそれでも結婚を選んだ。

相手を深く思いながら、自分の考えが浅はかだったと認めて笑っていた。

自分があそこにいけるとは思えない。

羨ましい気持ちと信じられない気持ちと、とにかく素直に同意できなかった。

「門真…有紗か。」

耳慣れない響きに嫌な気分にさえなりそうだ。

何を憧れているのだろう、なぜ早く結婚したいと思うのだろう、周りの女性の気持ちが分からない。

結婚前提で付き合えばもう速度は上がるだけなのか。

やはり皆が責めるように有紗に否がありすぎるのか。

助けを求める気も起きない心は底無しに落ちていくようだ。

渦巻く感情は有紗の温度を奪っていくような気がして眠りについた。

それでさえも逃げているようだと、誰かが笑った。

< 158 / 304 >

この作品をシェア

pagetop