私は彼に愛されているらしい2

3.足元が見えない

大輔との連絡は取らなくなった。

寝る前や週末が近くになるとどちらからともなく連絡を取り合っていたが、有紗は返信もしなくなったのだ。

初めはスタンプや絵文字が少なくなった。気分じゃなくなったからだ。

スタンプが笑っていても有紗の気持ちは笑っていない、何を選んでも不一致な気がして次第に少なくなっていった。

次には文章が短くなった。言葉を綴ることが億劫になったのだ。伝えたい言葉もない。

そしてついには連絡をしなくなった。

大輔からの連絡も少なくなった。

たまに来る連絡も自己完結に近い、問いかけでも有紗が返してこないことを悟ったのだろう。

仕事が忙しくなることは知っていた。

この時期は全く連絡をしてこないことも元々知っている間柄だ、有紗は今までの2人の関係性に少し救われた気がした。

帰宅すれば携帯の電源は切る生活は続いている。

家族も友達にもあの空間を邪魔されたくなかったのだ。

そんな時に大学時代の友人からの誘いが来た。

久しぶりに遊ぼうという言葉に有紗は久しぶりに笑った気がする。

是非と前向きな返事をして週末を迎えた。

今週はミスが目立ったけど後半にはなんとか挽回できた気がする。

お気に入りの服を着て、アクセサリーも付けて出かける準備は楽しかった。

待ち合わせ時間に間に合うように、少しでも早く出かけたかった有紗は笑顔で玄関を開ける。

かなり余裕が出来るが構わない、そんな思いで鍵をかけると一瞬にして思考が固まった。

視界の端に映ったものが有紗の動揺を誘う、それが本当かどうか確かめる前に声がかかった。

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