私は彼に愛されているらしい2
少しの間黙っていたと思ったら何の前触れもなく言われたことにみちるは固まってしまう。

「…えっと、有紗の話ですか?」

「ったりまえでしょ。」

いま舞が怒っているとしたら有紗が一番の有力候補な為名前を出してみたが当たりだったらしい。ガスガスとスプーンでご飯をつついては豪快にすくって口の中にカレーを詰め込んだ。

その様子はやはり不機嫌、これに尽きる。

「どれだけ私が話を聞いてやったと思うのよ。」

「いやー…有紗が自分から話していたというか、私たちが無理矢理聞き出していた感じがしますけど。」

「はあ?」

「私の話から流れで有紗の話、とか。」

「あの子だって自分から喋ってたじゃない。」

「まあ…そんな時もありました…かね。」

視線を宙に逃がして思い浮かべながらみちるも丼を口に運んだ。2人だけの昼休みは少しずつ定着しつつあって、どちらかが黙ってしまえば沈黙が生まれた。

3人居れば常に誰かの声がしたのに2人だと時折こういった時間が生まれて静かになる。

有紗は今日も11時からの打ち合わせが長引いているようで工場の方にある食堂で昼食を済ましているのだろう。

今日はいないようだが、日によっては沢渡もメンバーに含まれていると誰かが噂していた。

「舞さん。」

「なに?」

「もう少し待ってあげましょうよ。」

今は誰にも言いたくない時期かもしれない、そう続けてみちるは舞をまっすぐに見つめた。

不貞腐れた様に視線を下げると舞はスプーンを持つ手に力を入れて黙り込む、その姿を見てみちるは舞の今の心境が少し分かった気がした。

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