私は彼に愛されているらしい2
お風呂に入りながら有紗は考えた。

「…夜中に来ればいい方か。」

気になって仕方がないなら電源を落とすという手もある、しかしそれは逃げることになるので有紗はこのもどかしさも耐えることにした。

有紗が距離を置きたいと願い出た後からずっと、大輔はこんな気持ちを抱えていたに違いないと気付いたから。

「甘え方も考えろ。」

東芝の言葉が沁みる。

ここでも有紗は大輔に甘えていたのだ、それに気付けて良かった。

自分の事を好きと言ってくれる人はそう多くは無いだろう、嫌いという人もそんなにはいない筈だ。関わる大半の人が興味を持たないというのがきっと当たり前の世界なのだと有紗は思う。

好きだと言って共に時間を過ごしてくれる人の貴さをここに来てこんなに深く感じるとは思わなかった。

自分の世界に酔っているかもしれないがそんな時間を持てたことを貴重に感じて有紗は前に進む覚悟を決めたのだ。

逃げない。

たとえ返事が無かったとしても逃げない。

大輔の反応を待つ間に整った有紗の決意など知らない返事は意外と早かった。

メールを送ってから1時間もしない内の返された言葉はいつがいいかという質問、それに答えて4往復でやりとりは終わってしまった。

飾り気のない文面は今までと変わりない、だから素っ気ないかもしれないと恐れる必要はないのだと懸命に自分を励ましながらのやりとりだった。

「じゃあ、また週末に。」

その文章を送り盛大に息を吐く。

気付かない内に息を止めて文章を打っていたのかもしれない、どうしようもない疲労感が有紗を襲ってベッドに横たわってしまった。

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