私は彼に愛されているらしい2
平日を諦めていた人たちが一斉に休日に送り付けたような量に大輔が手を打ってくれたらしい。

「ふーん。」

どこかくすぐったい気持ちに少しの抵抗で有紗は呟いた。

大輔が言うように勝手に携帯を触られた訳だが不思議と嫌悪感はない。それどころか大輔の気遣いにうれしさを感じていた。

まだ体はだるいけど一日休めば明日からの仕事に影響はないだろう。

立ち上がってキッチンへ繋がる扉を開けるとまた有紗は大輔の名残に驚かされた。机の上には3日間は過ごせそうなレトルト食品が並べられていたのだ。

「なにこれ…。いつの間に買ってきたのよ。」

レンジでチンするだけのご飯もあれば、すぐに食べられる菓子パンもある、カレーや中華丼といったご飯にかけるレトルトも種類を揃えていた。飲み物もジュースからお茶から水まであり、ご丁寧にスポーツ飲料は本数を増やしてくれている。

「やりすぎ。」

そう呟いた途端に笑いがこみあげて止まらなくなった。昔から変わらない少しやりすぎなところが実に大輔らしい。

あれで熱い男は何をするにも少しやりすぎてしまう癖があって周りからよく怒られていたものだ。憎めない性格が手伝ってすっかりお約束のネタになるほどだった。

大学こそ違えど高校が同じだった千春も大輔らしいと笑うだろう、そう思って携帯で写真を撮ろうとしたが止めておいた。

自分だけの秘密にしておきたい。

理由は分からないが、そんな思いが出てきて有紗は菓子パンを手にして頬張った。

「ふふ。私が好きなやつだ。」

やはりそこまで食欲はないがどうしても食べたくなって半分ほど食べる。そしてまた薬を飲んで横になった。

明日からまた頑張ろう。

締切が終わってもまた次の提出までにやらなければいけないことは沢山ある。それ以外にも次に取り掛からなくてはいけない案件が待っているのだ。

土日に倒れて平日はバリバリ働く、サラリーマンの鏡だと自分を褒めながら有紗はまた眠りについていった。

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