もうすぐ夏なので怪談話でもおひとつ
 これは中学時代の話です。

 わたしは中学までの道のり2Kmほどを徒歩で通っていました。

 住んでいる場所は、山地を開拓した新興造成地の住宅街です。

 その住宅街になった『山』がね、どうやら神様付きだったらしいのです。


 ややこしい話なので、順番がどっちが先だったかはちょっと。


 えーと、まず、バス通りをいつものごとくでわたしは歩いていました。

 ある地点に差し掛かった時です。

 殺気立った視線が、ずーっとわたしの後を追いかけてきました。

 人の気でないことは解かっていました。

 嫌だなと思いながら、鈍感なわたしは「人の気でない=怪談」という簡単な結びつけができません。

 やはりこれも学校に行ってから、友人を介しての種明かしでした。

「ちょっと! 聞いた!?

 バス停通りの○○って店あるやんか、あそこで昨日殺人事件があってんて!!」

 えー・・・その○○の前で誰かが殺気立った目で睨んできたんですけどー・・・

 殺した方だか、殺された方だかは解かりません。


 で、家に帰る途中、トラックとすれ違いました。

 わたしは警戒して、御山のテリトリー内に入ってやり過ごしたんです。

 だから、無事だったと信じています。


 わたしは坂の上から、トラックは下から、山の境界点で二つの坂が交差します。

 なんか雰囲気が嫌な感じで、わたしは足を止めていました。

 案の定、警戒してなければ巻き込まれて大惨事、という感じですれ違っていきました。

 そのトラックのフロントガラスに、男の顔が映ってたんです。

 にやー、っと笑った、殺気立った男でした。

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