keep dream

7

「すみません。呼び捨てにして。でも心さんオレの話し全然聞いてくれないから!」


「ごめん」

「イイよ。どーせさっきの人のこと考えてたんでしょ?」

「…」



矢部くんは、また私の手を取ると子供のように大きく手を振り、
しょうがないなーと言う顔をして


「心さん、無理すんなって。逢えばイイじゃん。聞きたい事ちゃんと聞けばイイじゃん。
分っちゃったっていってたけどさ、それは心さんの勘違いかもしれないし…聞かなきゃ分らないよ。なっ。
オレさ、心さんのそんな顔見てるの辛いし、今日の心さんは、正直かっこ悪ィー。
私生活の心さんはオレ大好きだから幸せになってもらいたいし、仕事での早水さんは、オレの憧れだから、いつでもカッコ良く居て欲しいから・・
とにかく、逢ってみたら?」



不思議な子だ。仕事のときは早水さんといって、とにかくパートナー・後輩に徹していてその真面目さに感心する。

しかし、仕事以外の時は、心さんと名前で呼ぶし!たまにムカつく程生意気で・・
でも頼りになる弟のような存在だった。


そんな矢部くんに一応こう答えた。


「ありがとう。じゃあ」って・・・






「えっ帰る気?ウソでしょー!」

「何でヨ」

「ちょっと付き合ってよ。今から五月と会うんだ。」

「それって、デートでしょう?なんで私が一緒に行かなきゃ行けないさっ」

「五月も男ずれ」

「何それ。あんた達付き合ってるんでしょ?どー言う事?」

「そー言う事」

「そー言う事って!ヤダヨ。そんな修羅場に私がどうして行かなきゃならないの?すごい誤解するじゃん。五月ちゃん。」

「イイじゃん。誤解されてもオレは構わないよ。心さんの事好きだし。まんざらウソじゃないし…」

「何いってんの?おかしいんじゃないの?矢部くん!!」

「五月が逢いたがってるんだよ。そりゃあオレだって二人っきりの方がイイさ。」

「だったら!」



と言った膨れっ面の私の肩に手を回す矢部くんに驚く。





「オレ達ケンカしてる恋人同士に見えるのかなぁ?皆、見てくよ。ちょっとウレシイぃ」

そう言った矢部くんは本当に嬉しそうにニコニコ笑ってこう続けた。



「心さん、今日の借りは大きいよぉ~」

「もー分った。恥ずかしいから行くよ。何処よ。待ち合わせ場所はっ!」

連れてこられた場所に言葉を無くし立ち止まり足が動かなかった。








< 8 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop