think about you あの日の香りとすれ違うだけで溢れ出してしまう記憶がある
黒いフォレスターが停まって見える。

「いた。」

どうやら、畑山の車と無事に合流できたみたいだ。

美香子が窓から顔を出す。

「ザックイでいいよね?」

ザックイとは、大学時代によく利用した居酒屋だ。

とりポン酢が有名で美味しい。

毎晩大学生で賑わう。

今日は、まだ時間が早いけど小腹がすいたので、ザックイで飲む。

と言っても、飲めるのは女二人。

畑山の奴、美香子を酔わせてどうするつもりだ。

めんどくさいことになりそうだから、あまり考えたくない。

ザックイを出ると、ビリヤードをして、カラオケに。

「美香子ちゃん、歌うまいね。」

2回目にして、しみじみとぐっちゃんが言う。

「当然でしょ。バンドのボーカルやってたんだから。」

美香子は色も白くて、細くて、かなりかわいい。

元キャバ嬢だ。

大学時代の美香子は、自分で学費をかせいでいた。

懐かしい、美香子と初めて会った日のことを思い出す。

あれは確か、私たちが、大学一回生の冬。

私が当時つきあっていた、平井という男の家にいりびたっていた時。

買い物から帰った私の目に飛び込んできた女。

平井のベッドで、私のコートを羽織り、跳び跳ねている女。

それが美香子だった。

その日は、平井の親友の一也が、友達を連れてくると言っていた。

まさか、こんな美少女が来るとは…。

スッピンでジャージの私は、ひどく惨めな気持ちになった。

思わずドアを閉める。

「愛子。入ってこいよ。」

慌てて、平井が玄関を開けた。

「私のコート…。」

「ごめん。あいつ、一也の女。美香子ちゃん、やて。」

くしゃりと笑う平井。

関西弁の平井は兵庫出身だ。

色が白くて童顔な平井は、笑うとかわいい。

平井の明るい性格が大好きだった。

男受けが良くて、平井の家には、毎日友達や先輩が寝泊まりしていた。

私もそこに仲間に入りしたくて、平井と付き合うことにしたんだ。

そんなアプローチしかできなかった。

私と同じ学科の友達に清子という女がいて、彼女から紹介されたのが、平井だった。

部活をしていて、ヤンチャだけど面白い奴。という話だった。

平井は、会ってすぐの私に

「なぁ、愛子。俺に友達紹介してくれんか?」

と聞いてきた。彼女が欲しいらしい。

「なんで?私じゃダメなの?」

ふてぶてしく聞き返すと、

「おまえ、彼氏おるやんけ。」

くしゃりと笑う平井。

あぁ。いいな。この笑顔。

癒されるな。

「あら?いけない?」

平井と男女の関係になるのに、時間はかからなった。




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