くるうみ。~あなたと過ごした3日間~

~お弁当




「行ってきまーす!」


あたしは慌てて玄関からダッシュするけど、次の瞬間にはお母さんに大声で呼び止められた。


「瑠璃香、カバン! カバン忘れてるってば!」


あ゛~~! またやっちゃったあッ!!


あたしが手を振ると、お母さんは二階の窓からカバンを放り投げてくれたから、スマートにキャッチしようとして……


バム!

……思いっきり顔面で受け取ってしまいました。


「鈴本って、ぜって~弁当だけは忘れないのな」


隣でクスクス笑ってる小憎らしいヤツに、お弁当袋だけはしっかり持ったあたしはムッときたし。


「う、うるさい! だいたいなんであんたがあたしの隣にいるわけ? とっとと学校に行きなさいよ!」


顔が赤いって自分でも判るけど、あたしはそれに構わずに学校のある方を指差して野島を怒鳴りつけた。





――野島勇人が我が鈴本家の居候になって一週間。


学校関係者はもちろん、近所じゅうにも野島が我が家に来た事は知られてた。

礼儀でこちらから教えた事もあるけど、一番は山潮の人たちのおしゃべり好きが原因。

もう今更取り消しはできないくらいに知れ渡ってるんですよ……トホホ。
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