紫陽花ロマンス
4. だけど悲しくて


シングルマザーになって、今月で一年になる。


今思えば二度目の浮気が発覚してから、別れるまでは驚くほど早かった。すべての手続きを終えて、きれいさっぱり彼の痕跡を消し去るまでに一ヶ月も掛からなかったのだから。


関口君いや元旦那も、常に覚悟していたのかもしれない。いつ私にバレても仕方ないと。


あの時、彼の携帯電話に表示された彼女の名前は、もちろん彼女とは全然違う名前。彼がバレないように変えていたのだろう。だけど私には、その名が彼女を示しているとわかった。


名前でわかったのではなく、名前を見た時の彼の表情が明らかに変わったから。


彼は一応は否定していたけど、あっさりと認めた。一度は否定するというのは、日本人としての礼儀に似ているのかもしれない。


でも、一度目の時の彼のうろたえ方とは全然違っていたのには驚かされた。


潔さと諦めの入り混じった顔は、今でも忘れられない。




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