オマケ集。
【初恋】


私、婚約するんだって。



ひとごとみたいに言ってみたら

亮介は、顔色一つ変えずに

「へー」と気のない相槌で、
煙草をくわえた。

火がなかったのか、
軽く眉根を寄せて舌打ちする。


「コトコ、なんさいだっけ?」

いま思い出したかのように、顔を上げる。


「16。亮介より1コ上なだけですー。」

そう言って煙草をとりあげると


亮介は顔をしかめたものの、

特に文句を言ったりはしなかった。


「へー、お嬢様も大変だね。
相手はハゲか、腹の突き出たオッサン?

合法的売春契約だね。」


怪しげな言葉がぽんぽん飛び出すその口は、

しまった、
煙草で蓋をしてたのか

と思う。 


「それがなんと、ピチピチの20歳。しかも超カッコよくて優しいの。」


誰だと思う?と聞くより先に

亮介がみるからに嫌そうな顔をした。


その鼻先に指をつきつけ、

ぴんぽーん♪とくちずさむ。


「遼平君でした。」


「げ。ロリコンの変態だ。
コトコ、人生終わったな。」


まったく、
聞き捨てならないことを言う。


たった4つの年の差だ。

しかも、遼平君は私の初恋だ。


小学生の時、
高校生の遼平君に家庭教師をしてもらった。


「私のこと、
ずっと好きだったって。」


「おえっ、キモ!!知ってるか?

ロリコンて、力づくで思い通りになるからロリコンやるんだ。

この前テレビで言ってた。」


あれだけ清廉潔白を地でいくような人は他にいないだろうに

そんな遼平君をつかまえて、

よくそれだけのことが言えるなあと


私はほとんど感心して、

亮介の顔を見た。



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