山神様にお願い

・暗い瞳



「ひばりセンセー、月曜日、どこ行ってたの?」

 阪上君の声に振り返った。



 金曜日、今日は家庭教師のバイトの日。

 月曜日の家庭教師のバイトを休んだので、阪上君に会うのは約1週間ぶりだ。オープンキャンパスの日、以来。

 緊張するかな~と思ってきたけど、やっぱり3年以上も教えている子なので呼吸が判っていて、特に何ともなくバイト時間に入れた。

 そして私が出したプリント2枚を終らせて、その採点をしている所で言われたのだ。

「え?」

 私は出来るだけキョトンとした顔を作る。彼は、部屋の真ん中にある境界線ギリギリの場所にあぐらをかいて座り、こっちを見ていた。

「もう一つのバイト・・・」

 嘘じゃあない。もう一つのバイトのメンバー全員と一緒にいた。ただし、働いたわけではないけど。

 阪上君は唇をとんがらせて半眼になり、前髪の間から見ている。

「日焼けしたよね」

「え、そ、そう?まあそりゃ、夏だから・・・」

「居酒屋のバイトで昼間に集合って、何したの?」

「え・・・と、話とか。シフトの調整、とか」

「センセーって嘘下手だよね~」

 ぐっと詰まった。流れるような嘘をつきたいとは思わないが、こういう時に応用のきかない人間であることを嘆く事に、自分でもうんざりする。


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