山神様にお願い

・トラ、牙を剥く



 翌日、昼前に電話が来た。

 ケータイの振動に気付いて、ダッシュで通話ボタンを押す。

 おはよ~と、いつもの軽いノリで夕波店長の声が聞こえてきたときは、私は思わず正座してしまった。

「おはようございます!」

『元気だね~、俺は寝不足もいいとこだよー』

 寝てなくて、ラリってるよ~あははは~などと軽やかに笑ってる場合なのだろうか。私は聞きたいことがありすぎてお尻をむずむずさせながら、自分の部屋で前のめりになる。

「お店はどうなったんですか!?龍さんは大丈夫ですか?私は暇なんで、何かあれば――――――」

『はいはい、いっこずつね』

 たら~っと低い声でそう言って、店長が話し出す。

 結局、昨日店長がこっちに戻ってきたのは午前2時のことで、そこから破壊された店をオーナーと一緒に見に行ったらしい。

「破壊・・・確かにその表現で正しいと思います」

 私の言葉に、店長がだよね、と返す。

『もう、驚いて、あららーだった。ただの喧嘩じゃダメだったのか?って』

 で、流石の日々立さんも絶句してたわ~と笑う。

 ・・・笑うとこじゃないのでは!?そう思ったけど、とりあえず先が知りたくて言うのは止めた。

『店には保険屋が今日見にくるし、板前が腕を怪我しているし、とりあえず今週は休業になった。時給制で、しかも家庭教師辞めてるのに本当申し訳ない』

「え、龍さん腕怪我したんですか!?」


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