山神様にお願い


 私はまたガックリと額をベッドに沈める。受話器の向こうで彼がボソッと言った。

『・・・俺、明日もセミナー行くから切るわ。まだ資料読んでないし・・・』

「あ、うん。ごめんね、忙しい時に・・・」

 ぶつ。言ってる途中で切られてしまった。私は力なく携帯のボタンを押して閉じる。


 ・・・・あーあ、一緒に喜んでもらおうなんて、やっぱり無理だったか。

 ビーズクッションを引き寄せて、それにぐりぐりと頭を沈みこませる。

「ううー・・・」

 就活が壁になって別れるカップルは多いと聞いたことがある。だけど、俺達はそんな小さなことでは崩れないよって、言ったくせに・・・。

 言ったじゃないのよー。

 明るさと大らかさをなくしてしまった彼を、今度は私が支えるのだ。ファイト、私!――――――――そう思ってきた。

 だけど、それって一体、どうやったらいいの?

 今まで、ただついてきただけだったんだな・・・。私は、彼の後についてきただけなんだ。で、どうしたらいいか判らなくなっているんだろう。

 仁史君の為に、私には何が出来るだろうか。


 ぐだぐだと夜を寝転んで過ごした。

 昼間上がったテンションは、エロイ阪上君と暗い小泉君によって見事な急降下を果たし、私は一人、ゾンビのようになって布団に潜り込んだ。


 既に、明け方だった。




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