初日が来た。

 私は深呼吸して、居酒屋「山神」の前に立つ。あー、緊張する。大学に入ってから他のアルバイトをしたことがないので、勝手が判らないし、とりあえず耳を超オープンにしとこうっと。そう言いきかせて、ドアに手をかける。

 ガラガラガラ。

「こんにちはー」

 夕方の4時だ。本当は5時からだけど、今日は初日で教えることが多いから4時にきてくれる?と店長さんに言われていたのだ。

 既に準備が始まっているらしい店内には出汁のいい匂いが溢れ、カウンターの中には二人の男性がいた。パッと顔を上げて、笑顔をくれる。

「鹿倉さん、おはよう。どうぞー」

 もう一人の茶髪の男性は会釈をくれる。私は緊張した笑顔で頭を下げて、店内に足を踏み入れた。

 近寄ってきた店長の夕波さんの足元を思わずチェックしてしまう。今日はちゃんと靴をはいていた。踏み潰したスニーカーを、ちゃんと履いているというのかは知らないけど。

 それにしても、大きな足だ。まじまじと見てしまった。

「ここに、鞄しまってね。それで、これが制服です」

「はい」

 制服だと手渡されたのは、真っ黒なTシャツだった。後ろに大きく「山神」と漢字が入っている。

「おおー、格好いいですね」

「そうでしょ」

 私の言葉に店長が真面目に頷いたのが面白かった。