山神様にお願い

・威嚇と爆笑



 その週末、本当に秋になったんだなあ~と思うような涼しい風が吹き出した頃、酒処山神は久しぶりにオープンした。

 木曜日に龍さんが復帰してきて、私はその知らせをウマ君からのメールで知り、その後で店長から電話がきて、龍さんに謝らせるから今晩集合~というたら~っとした命令で、山神に行ったのだった。


「ごめんなさい!」

 
 龍さんがその大きな体を半分に折り曲げて、茶髪の頭を私達の前に下げていた。

 私はその勢いと衝撃的な光景にビックリして口をあけていた。

 うわああ~・・・謝るって、こういうことを言うのね!そう思うような、本気の謝罪だった。

 隣でツルさんが一人頷いている。当然よ!とその顔には書いてあって、それはでも、ツルさんが龍さんを心配していたことの裏返しだと思った私だった。

 だって、私は個人的に暴風雨の中にいたもので、店長のとアレコレがあった今週は龍さんのことはすっぱりさっぱり頭の中から消えていたのだ(ごめんなさい、龍さん)。

 龍さんの腕の怪我は大したことはなかったらしく、もう完全に戻っていると聞いていた。最後、警察に連行されていった時の顔は赤紫に腫れて出血もしていたけれど、今ではもういつものタレ目のイケメンに戻っている。目の横の絆創膏だけが喧嘩の名残だ。

「皆に迷惑をかけて、本当~に申し訳なかったと猛省した。今週店を休みにしてしまって申し訳ない!」


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