山神様にお願い


 二人で合唱するのだ。お~し~え~て~!!って。ハートマークなんぞを両手で作ってふざけて。

「うるさいですーっ!!!」

 私はもう貧血で倒れるかと思うくらいに頭を振りまくっていた。

 帰らせて頂きます!そう宣言して、二人に笑われたり。せっかく宴会でも時給出してくれるっていうのに余裕だな~、お前は!とか言われたり。

 弄られるうちが花よ~、シカちゃん、などと言われたり。

 くっそう!私は不貞腐れて一心不乱に食事の支度をしまくったのだった。

 買出し組みの店長とウマ君が戻ってくるまでそれは続き、彼らが戻ってきたらきたで、ウマ君が妙に赤い顔をして私の視線を避けるのだ。

 ・・・・絶対店長、何か言った・・・・。もーしかしてもしかして、森とか私の部屋とか・・・あったアレコレを話したんじゃないだろうか・・・。それが嫌というほど判ってしまって、私は心の中で号泣していた。

 ああ、恥かしい。もうお家に帰りたい。そう何度も思ったのだ。

 だけど、久しぶりに会った龍さんをガッカリさせるわけにはいかないし、お給料お給料と言い聞かせる。その二つを頭に叩き込んで最後まで宴会に参加した。

 ものすごーく、自分がえらいと思った。

 それが、昨日のことだ。

 今日は5日ぶりに山神の復活で、開店時には店長と龍さん、ツルさんと私のメンバーだった。

 何となく、店長がいつもやっているからと形式みたいになってしまっていることを今日もやる。

 奥の壁、何やらよく判らない飾りが存在を主張する、この店の守り神、山神様に向かって、全員で合掌する。

 頭を下げて、大きな声で。


 山神様、今晩が、無事に終わりますように―――――――――――



 
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