郊外の、この町の商店街を駆け抜ける風がかなり冷たくなって、私達は冬支度をする。

 マフラーを出して、手袋を買って、毛糸の帽子を被ったりするのだ。そうして、次の新しい季節がくるのにワクワクする。

 山神の制服は春夏秋冬同じなので、相変わらず店の中では背中に山神と漢字が入っている黒いTシャツとジーパン。それでも、注文される飲み物にお湯割りが入ってきたからやっぱり季節を感じたんだった。

 私は大学の卒業論文の書き出しが始まっていて、自分がテーマに選んだものを理解するために、昼間は結構頻繁に大学の図書館にいくようになっていた。

 そんなことも、冬の到来をしみじみと感じさせた。

 この町には滅多に雪は降らない。だけども、凍える指先や吐く白い息なんかで、一年の終わりが近づくのを感じることは出来るのだ。


 そんな中。


 山神の店長である夕波虎太郎が、しばらく店を空けることになったのだ。

「ついに、来ちゃったね~」

 いつものようにカウンターで仕事終わりのビール一杯を皆と一緒に飲みながら、店長があっさりと言った。

 龍さんも、ウマ君も、私もそれを黙って聞いていた。

 秋にあの喧嘩騒動があった時に危篤状態に陥った店長の大切な身内の方が、ついに今日永眠されたらしい。

 店にその電話が来たのが夜の9時過ぎ。