外見天使の腹黒大魔神阪上八雲が、私のケータイ電話で何をしたかが一向にわからなかった。

 何かをダウンロードした?形跡が見当たらない。メール転送や作成?同じく形跡が見当たらない。他のことも同じく、私が見た程度では何の変わったこともなかった。

 ただし、あっちは元々賢い上に私なんかより遥かに精密機器の取り扱いになれていて、私を誤魔化すことなんてケータイをパクったことくらいに簡単なはずだ。

 ぎゃあー。・・・もう、泣きたい。

 私はその喫茶店にその後30分も残って色々やってみたり考えてみたりしたけど、彼が何をしたのかが全然わからなかった。

 だけど、何かしたはずだ。だって脱兎のごとく逃げ出したもの!

「くっそう・・・阪上八雲~!」

 誰にも聞こえないように小声で呪いを呟く。

 だけどどうしようもないから、私はがっくりと肩を落として帰宅した。今晩も山神に出勤の日だから、そろそろ帰らなくては間に合わない。

 とぼとぼと自分の部屋への道を歩く私の上には黒い雲があったはずだ。そうに決まっている。それくらいには、どよーんとした気分だったのだから。


 で。

 阪上八雲、あの美形の悪魔が何をしたかは、山神のドアを開けた時に判った。

 なぜなら、おはようございまーす、と挨拶しながら入って行った私に気付いて、キッチンの中からウマ君がすっ飛んできたからだった。

「シカさああああああーん!!!これってマジですか!?どうしてなんですか!いいんですか、だって就職はっ!!」