山神様にお願い
アルコールも入ってないのに皆で機嫌よくゲラゲラと笑う。夕方の4時から全員で集まってのことで、皆で掃除した店内も綺麗で、山神様まで光って見えるようだった。
私は奥の壁を見詰める。
何てことかしらって。
私もしっかり、山神信仰者になってるわ、って。
小さい頃の店長を支えた色んなものの気配、その存在と柔らかさ。厳しさと優しさ、そのようなもの。
それが形を変えて、今はあそこに。
初めはよく判らずに、え、何この店って思った私も8ヶ月後の今はここで、当たり前に両手を合わせてお祈りしている。
家も特に信仰する宗教はなく、私には神仏に祈るということがよく判ってなかった。
だけど、今なら判るな。
お箸を置いて、皆が笑ってふざけるのを見ていた。
神様の存在を完全に信じるか、そういうことはもう最後でいいんだ。
手を合わせて何かに祈る。その時に発生する、ものすごいパワーが、あの力が、色んなことが起きる毎日を生きていく全てのものには必要なのかもしれないって。
想いはこうして形を変える。
あやふやだった気持ちも、お祈りしようとすることで形がハッキリ見える。
それは自分自身での確認。自分の気持ちを確認するための大切な儀式。
自分が今、望むもの、大切に思うこと、それらの為に懸命に力を飛ばすこと。
心の中でより処にするもの、それは自分にとって大切であればそれでいいのだって。
姿が見えない山神様が、耳元で笑った気がした。
そうだよって。
私もニッコリ微笑んだ。