・ウマ君は天を仰ぐ・


 俺は実に、変わった職場でアルバイトをしている。

 特別他の会社を知っているわけではないのだ。今までにしたことがあるアルバイトは他に一つだけだし、まだ大学生で社会経験だって多くはない。

 だけど、今働いている居酒屋が大層変わっている、とは強く思っている。

 それは主に店長の性格によるところが多い。

 オーナーでもないのに好き勝手、本当に自分のしたいように店を切り盛りしているようなのだ。

 俺の名前は赤谷冬馬。よく暑いのか寒いのか判らない名前だ、とからかわれる。多分赤がつくので暑そう、冬の馬で寒そうなんだろう。だけどその微妙な名前がすこぶる役に立つこともあるのだ。

 なんでって、それは、この店の特徴による。

 それは──────────

「・・・ウマ、はよ。仕込み終わってるから俺ちょっと寝るわ。森にいるからオープン前によんで」

「はーい」

 そう言って厨房を任されているリュウさんが店の2階、「森」へとフラフラと上がっていく。珍しく寝不足らしい。パワフルなリュウさんはあまり店で休まないのに、どうしたんだ?

 俺は店の裏口から入ったばかりで、鞄を肩から下ろしたところだった。