山神様にお願い


 なんじゃそりゃ。呆れてしまった。後の二人は熱心に手を合わせているというのに。

 店長は二人の後ろ姿を見ながら、ゆっくりとビールを飲み干した。

「信じる力次第じゃないかな。何が物事へ影響するかは知らないよ。だけど、お祈りすることで力に変えることは出来るよね。ここの皆はそう思ってやってるんだ、と解釈している」

 ・・・ふむ、成る程。

 私は立ち上がった。疲れた体に入れたビールで少しふらつく。よたよたとお祈りをする二人に近づいていって、私も合掌した。

 山神様。こんばんは、初めまして。鹿倉ひばりって言います。お願いをかなえて下さい。どうか、どうか―――――――――

 心の中で唱えて目を開ける。

 振り返ると笑顔の3人。

 一番奥で、店長が目を細めていた。優しい表情だった。その柔らかい笑顔のままで、夕波店長がのんびりと聞く。

 何をお願いしたのって。えらく熱心に祈ってたね、って。

「・・・本気の願いがあるんです」

 私は「山神様」を振り返ってみた。

「・・・お願いは・・・」



 彼の、小泉君の就活が、うまくいきますように――――――――――――





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