・トラの御多忙な休日1「ヤンキー時代」


 夕波虎太郎14歳。

 「お母さんもう、あんたなんか知らないわ!」

 そう言って、母親が駆け出て行った。またえらく泣き喚いたあとだった。

 バタンと音をたててしまったドアは、先週自分が投げた鋏が突き刺さったあとが残っている。

 母親はたらふく文句を俺に言いまくったあと、逃げるように出て行った。きっとこのまま仕事にでかけて、夜遅くまで帰ってこないんだろう。

「・・・ったく、うっせーババアだよ・・・」

 俺はだら~っと崩れたソファーにもたれかかりながら、窓から入る太陽の光に色を抜いた前髪をすかしてみていた。

 強烈なアルコールで何度も色を抜いた髪は、今では褪せたブロンドに近い色になっている。まだらになったその頭は、登校すれば先生がブラックスプレーをかけまくるせいでいつでも頭皮が荒れていた。

 ・・・・腹減ったな~・・・・。今日はどこにいくかな。

 ケイスケのとこでもいこうか。でもあいつはまた女と寝そべってんだろうなあ~・・・。

 昨日南中のやつらと戦った時に角材で殴られたすねが酷く痛む。唇はまだ切れていたけれど、夜に病院まで迎えにきた片山さんがビタミン剤を一瓶置いて行った。これを飲んで、今晩は大人しく寝てちょうだいって。そのあとで片山さんは母親を慰めに隣の部屋へ消えた。

 母子家庭のうちの近所に住む片山さんは、母親の学生時代からの親友らしい。すっきりとした痩せた女で、いつでもはっきりと物を言うのだ。俺を自分の子供みたいに扱っている。ちょっとばかりうぜーけど、それでも丁度いい距離を保ってくれている人だった。片山さんには暴言も吐けない。なんか、そういうことは言っちゃいけない気がするのだ。実際あまりあの人にはイライラもしない。