居酒屋にも慣れてきた頃で、しかも家庭教師のバイトも山場を無事に越えていて、私はルンルン気分だった。

「おー、順位あがってるじゃない!」

 1学期の期末テストの返却が続き、それなりの進学高へいっている我が生徒、悪魔君・・・でなくて、阪上君の成績も上々だ。

 よしよし、家庭教師として役に立っているのかは甚だ謎だけど、とりあえず、生徒の順位は上がっている(だとしても、それは彼の元々の頭の良さであって、私の尽力ではない)。

「僕頑張ったでしょ?ご褒美頂戴よ、センセー」

 阪上君は部屋の真ん中の境界線ぎりぎりのところで胡坐をかいて喉を鳴らしそうな顔をしている。

 少し前に伸びた髪を切ったらしく、爽やかさが強調されていた。

「え、ご褒美?デコピンとか?」

 中指と親指で輪っかを作ってニヤリと笑うと、途端に阪上君は不機嫌になった。

「・・・悪影響だ」

「はい?なあに?」

 小声で聞こえなかった。私は椅子をくるりとまわして体ごと彼の方を向く。

 阪上君は後ろに両手をついて胡坐を崩すと、ぶーたれた顔で言う。

「センセー、居酒屋のバイト決まってから意地悪になったよね」

「え、そう?」