山神様にお願い


 私の生徒は、大人顔負けの腹黒さと好奇心を持っていた。回転が早く、人をおちょくるのが大好きで、そして、セクハラ大魔神なのだ。

 危険でしょ、危険危険。この子から半径2メートル以内に入ってはいけません。特に女性は気をつけましょう、そう書いた看板を作って、この子の胸に引っ付けたいほどだ。

 まず、親から金を引き出させる腕は天下一品。色んな嘘を上手について、必要とあらば綺麗に涙まで浮かべてみせて、母親を銀行のATM代わりにしていた。

 ひょんなことからそれを知ってしまった私は、足りない脳みそをこねくり回して彼を阻止することに全力を注ぎ、その状況に阪上家の父親が気付いて、大変な信頼を得てしまった。

 実は、半年くらいで嫌気がさして辞めたかったのだけれど、阪上君が無事高校に入学してからも、私は家庭教師を辞められないでいる。

 阪上家の両親曰く、この悪魔に社会常識を教えてくれる奇特な存在、だかららしい。そう褒められてもあまり嬉しくないね。でも時給を普通の家庭教師では無理でしょってくらい上げて下さったので、私はやっぱり辞めずにいるのだ。

 金に、負けたのですね。いいのよ、笑って笑って。

「センセー、今日何か機嫌いいよね」

 悪魔君・・・・いや、訂正、阪上君がそういった。

 彼がやっているのは私が教科書から厳選した今学期の重要項目のプリントだ。

 とにかく何かやらせてないと、この子は悪巧みを繰り返すのだ。すると私は気力も知力も体力も消耗する。なので、ひたすら課題を与えまくる。だって家庭教師で来てるのですもの!


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