暴露 （秘密を知ってしまった・・・）

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「草野さん」
　加世は田中課長に呼ばれた。
　「それでは、研修で習った接遇の基本をやってもらいます」
　新入社員が集まった研修中に、加世が指名された。新入社員研修は、1日を６時間に区切って担当社員が講義をするようになっている。
　社員200名を超える中小の貨物運輸を商う会社に就職して、すでに1週間を過ぎている。研修期間中は、接遇、就業規則、法律知識、会社の営業内容などを新入社員10人に対して一気に詰め込む。
　1週間も過ぎると、緊張もいくぶん和らいできたところだ。
　加世は接遇の要点を押さえて、求められることをこなすことができた。
　席に戻った加世は、いつもやっている物思いにふける作業に没頭した。
　田中課長は、光雄って名前だったかな？結婚しているのかな？40歳くらいだろうな？いつも、寝癖が・・・。
　退屈な講義中、加世は講師の人物像を想像して、その人の生活ぶりを思い描くのをひそかな楽しみにしている。
　田中課長は、結婚して10年以上、子供は1人、郊外の賃貸マンションに住んでて、趣味は・・・。
　趣味はきっと地味にパチンコだ！賭け事なのだから、逆に派手なのかな？
　
　田中課長への勝手な想像を、この先確かめるつもりもないにもかかわらず、加世は妄想をふくらませていった。